2015/08/26

出向者のマイナンバーは出向元、出向先のどちらで取り扱う?

 他社から出向している方の、マイナンバーの取扱はどうなるのでしょうか。

 結論としては、出向元、出向先それぞれで取り扱われる可能性があります。

 出向に関する各種労働条件は、基本的には出向元と出向先との出向契約によって個別に決まります。

 マイナンバーは税関係と社会保障関係で扱うわけですから、これらの事務がどちらで行われているかによって取扱いが決まります。


一例として、
 ・給与計算(源泉徴収)、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)・・・・出向元
 ・労災保険関係・・・・出向先
で取り扱っているとします。

 そうすると、出向先、出向元それぞれで、関係業務に応じて取り扱われるわけです。

 ところで、この例ですと、出向先は労災保険関係のみということになります。労災保険関係でマイナンバーを取り扱うのは、例えば労災発生時の療養補償給付等の書類が想定されます。マイナンバーを会社で取り扱う際には、事前に本人確認措置(番号確認+身元確認)を行う必要があるわけですが、労災は滅多に発生するものではないでしょうから、出向者については、はじめからマイナンバーの本人確認措置を行うのではなく、案件が生じた時点で本人確認措置をすれば良いわけです。

 できるだけ業務負荷を下げたい、また、マイナンバー取得には安全管理措置が必要なので、そこはうまく対応していきましょう。

2015/08/20

SR第39号は話題の「マイナンバー」と「ストレスチェック」に関する情報が満載

 日本法令のSR第39号には、今年末から来年初めにかけて、人事労務の2大テーマともいえる「マイナンバー」と「ストレスチェック」の情報が満載されています。双方とも最終的な情報が確定していない中で、徐々に対応を進めていかなければならないということがあります。そういった中で、現段階での対応方法が詳しく記載されており、大変参考になる記事ですので、関連する業務に従事される方は、ぜひ参考にされるとよいでしょう。


SR 第39号 2015年 09 月号 [雑誌]: ビジネスガイド 別冊
日本法令 2015-08-05




 私が特に役に立った記事は以下の通りです。


【1】マイナンバーをめぐる最新動向 厚生労働分野におけるマイナンバー制度の対応について
厚生労働省 政策統括官付情報政策担当参事官室 芝 真理子

 マイナンバーは2016年からスタートになり、「まずは税関係」ということになり、「社会保障関係は2017年から」というのが大きな枠組みになります。これはこれで正しいのですが、実は、雇用保険関係は2016年からスタートします。また、健康保険、厚生年金といった他の社会保障関係も2017年からスタートしますが、詳細はまだ明らかではありません。また、情報もまだまだ少ない状況です。そんな中で、現段階で対応すべき点が分かりやすく書かれています。


【2】社労士業務への落とし込み 社労士からよくある質問と実践的解決法
弁護士 渡邉 雅之

 取扱規程等難しい問題に取り組まれている渡邉先生の著『マイナンバー制度 法的リスク対策と特定個人情報取扱規程』は私もバイブルのように活用して進めていますし、勤務する弁護士法事のホームページも情報が充実しています

 先日ブログに書いたマイナンバーの社内体制整備は2016年5月~6月でも間に合う?の解説も掲載されています。「結局のところ、最低限何をすればよいのだろうか。」ということが、実務的な視点で記載されています。


【3】「ストレスチェック」実践対応

「ストレスチェック」対応のための"コツ"と"ツボ"
特定社会保険労務士 塚越 良也

産業医の視点からみたストレスチェック制度のポイント
精神科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント 石井 りな

 ストレスチェックに対する対応についても人事労務関係では大きなテーマの一つです。法施行はいよいよ2015年12月1日に迫りましたが、まだまだ対応が進んでいないという会社もあろうかと思います。この記事を見ると、概要から細かいところまで把握できると思います。


<SR 第39号 2015年 09 月号>

「マイナンバー」実践対応
【1】マイナンバーをめぐる最新動向 厚生労働分野におけるマイナンバー制度の対応について
厚生労働省 政策統括官付情報政策担当参事官室 芝 真理子
【1】マイナンバーをめぐる最新動向 『社労士のための対応ハンドブック』実務上のポイント
特定社会保険労務士 小林 元子
【1】マイナンバーをめぐる最新動向 年金業務におけるマイナンバー制度導入の影響
特定社会保険労務士 東海林 正昭
【2】社労士業務への落とし込み チェックリストでわかる実践対応【顧客対応編】
特定社会保険労務士 神野 朋美
【2】社労士業務への落とし込み 事例に学ぶ実践対応【社労士事務所の体制整備編】
特定社会保険労務士 山田 芳子
【2】社労士業務への落とし込み 社労士からよくある質問と実践的解決法
弁護士 渡邉 雅之
【3】規程&書式の作成・運用の実務 マイナンバー法に対応した社内規程・書式の定め方
弁護士 坂東 利国
【特別企画】 書類ベースによるマイナンバーの取得・保管・廃棄の実務と社労士事務所のマイナンバー取扱事務
株式会社日本法令 マイナンバープロジェクト

「ストレスチェック」実践対応
「ストレスチェック」対応のための"コツ"と"ツボ"
特定社会保険労務士 塚越 良也
産業医の視点からみたストレスチェック制度のポイント
精神科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント 石井 りな

有期雇用特別措置法
第一種・第二種計画認定・変更申請の実務と申請書記載の仕方
特定社会保険労務士 鳥井 玲子

助成金
平成27年度版 社労士が"使える"注目の助成金 ① キャリアアップ助成金
特定社会保険労務士 大畑 美栄子
平成27年度版 社労士が"使える"注目の助成金 ② 職場定着支援助成金(個別企業助成コース)
社会保険労務士 西島 徹
平成27年度版 社労士が"使える"注目の助成金 ③ 障害者雇用関係分野の助成金
社会保険労務士 荒川 ゆう

ストレスチェック対応
短期集中連載・「職場うつ」の本質を探る! 第2回『ストレスチェック法制化の背景』
ジャーナリスト 海部 隆太郎

事務所経営
"あの成功事務所"は何をしているのか? 事務所経営のノウハウ 事例に学ぶヒント&エッセンス Vol.4
社会保険労務士法人 日本人事(代表社員:山本 喜一)

開業体験記
私の開業体験記①
特定社会保険労務士 鈴木 慎太郎
私の開業体験記②
社会保険労務士 小池 裕之



2015/08/19

マイナンバーの本人確認措置と収集の違い

 マイナンバーの「本人確認措置」が必要な範囲と、不要だが従業員が確認し、会社に提出する書類にはマイナンバーをきちんと書かなくてはならない範囲というのは異なります。特に、本人以外で「国民年金第3号被保険者たる配偶者」について、本人確認措置が必要であるということが混乱を招いているような気もします。扶養者でいえば配偶者以外の扶養者(子どもなど)は、会社が本人確認措置をする必要はない、すなわち通知カードや番号カードを提出する必要もないのです。


 一覧表でまとめましたので、参考にして下さい。

2015/08/18

マイナンバー関連書類を送付する際の送付手段比較→やはり簡易書留か

 最近は、マイナンバーに関する記事が多くなっていますが、先日のブログで、マイナンバー関連の書類の送付方法について、「簡易書留が標準になりそうだ」ということを書きました。いわゆる送付履歴が分かる手段は何なのかについて、いろいろと調べてみました。大前提となるのは、「信書を送れるサービスかどうか。」という点ですので、この点をクリアしているものを選んでいます。

 結論として、料金、サービス内容面でやはり全体的なバランスがとれているのが「簡易書留」というところなのでしょうか。追跡サービスが、「引き受けと配達のみ」ではありますが、マイナンバーの安全管理措置という意味ではまずはまずまずといえます。

 なお、そもそも論として、簡易書留等で送付しないと法律違反になるわけでもありませんし、これらのサービスを使ってもリスクがゼロになるということではないので注意する必要があります。どこまでリスクをとる必要があるのか、ということは、各企業が考えていく必要があるのでしょう。


2015/08/17

マイナンバーの社内体制整備は2016年5月~6月でも間に合う?(三宅法律事務所弁護士 渡邉 雅之先生)

 マイナンバーの取扱規程が詳しい、弁護士法人三宅法律事務所渡邉雅之先生ですが、1ヶ月ほど前、企業のマイナンバー制度対応の社内体制の整備について、ある意味での「警告」をしています。つまり、安全管理措置が十分な状態でない状態で、拙速にマイナンバーを収集すべきでない。まだ来年になってからでも十分に間に合うというものです。

 渡邉先生の、「マイナンバー対応スケジュール(何とかするスケジュール)」では、2016年の5月~6月くらいまでに体制を整えるというスケジュールもあり、としています。マイナンバーの対応については何が本質なのかをしっかり見極め、しっかりと対応していくことが必要でしょう。

マイナンバー情報:マイナンバー社内規程(ワードファイル)(全面改訂版)のページの中の、

⑨マイナンバー体制整備スケジュール ⑨体制整備スケジュールイメージ図 

は、現段階の準備状況がどうであれ、必ず読まれた方が良いです(以下はイメージ図)。


先日も紹介していますが、マイナンバー関係の書籍の中でこれはヒットでしたね。
なかなか押さえにくい規程をその根拠(ガイドライン)が詳しく書いてあるのはこれだけだと思います。

2015/08/15

マイナンバーの取扱規程のテンプレートはどこから手に入れる?

 マイナンバーの取扱の基本方針、取扱規程の策定は悩みどころの一つですが、ゼロから作成するのは困難で、何かしらのテンプレートが必要でしょう。日本税理士会連合会全国社会保険労務士会連合会にもテンプレートが公開されていますが、残念ながらこれらはそれぞれの会員専用なのです。

 もう少しスムーズにテンプレートを得られないか、そんな悩みにお答えするのが、弁護士法人三宅法律事務所です。ここにはマイナンバーに力を入れ、各種公演・執筆活動をされている渡邉雅之先生が在籍しています。最新のテンプレートは以下リンクに公開されています。
マイナンバー情報:マイナンバー社内規程(ワードファイル)(全面改訂版:平成27年8月1日版)

 規程等のテンプレートだけではなく、体制整備チェックリスト、委託契約書、就業規則対応、本人確認方法など、非常に便利なツールが多数準備されています。ファイルは適宜アップデートされていますので、最新版を確認すると良いでしょう。

 また、渡邉先生の以下書籍もありますので、合わせて確認すると理解が深まります。

2015/08/14

派遣社員のマイナンバーの取扱いは基本的には「派遣元」であるが、気になる点が1つだけある

 人材派遣の場合、出向とは違い、派遣元と派遣先が責任を持つ分野が法令ですべて決まっています。そういう意味では、一般論として、派遣社員のマイナンバーの取り扱いは、税・社内保障を扱うという意味において、「派遣元」であるのですが、実はひとつだけ、労災の際の、労働者死傷病報告の取扱いの動向を注目しています。

 労働者死傷病報告書とは、派遣社員が休業災害以上になった場合に労基署に提出する書類ですが、派遣社員が休業災害以上になった場合には、派遣元と派遣先の「双方」が提出することになっています。今後の動向にもよりますが、労働者死傷病報告にマイナンバーの記入欄が設けられた場合、派遣先でもマイナンバーの本人確認措置、安全管理措置が求められる可能性がありますので注意が必要です。まだ決定事項ではありません。



2015/08/13

マイナンバー関係書類を「郵送」する場合は「簡易書留」が標準になりそう

 マイナンバー関係の書類の授受で、郵便にする場合は普通郵便でいいのでしょうか、それとも書留で送るべきなのでしょうか。これについては、法令で決まっているわけではありません。この問いに対するヒントが先般公開された、「雇用保険に関するマイナンバーの扱い」の中にあります。

 結論としては、「簡易書留」にて送るべきなのでしょう。


<該当する雇用保険関係のマイナンバーQ&A>

Q16 個人番号の届出を郵送で行った場合に漏えい事故が発生するリスクがあるが、どのようにすれば良いか。

(答)
 ○ 個人番号については、厳重な管理が必要とされていますので、できる だけ電子申請による届出を行ってください。 

○ 併せて、平成 28 年1月より、事業主が指定する者個人の個人番号カ ードを電子証明書として利用することが可能となりますので、積極的な 利用をお願いします。

 ○ なお、郵便での届出を行う場合は、書留郵便による届出を原則とします。 





 この他にも、10月より各個人には、マイナンバーの「通知カード」が送付されますが、これも簡易書留で送られてくることを考えると、マイナンバー関係の書類の標準的送付は簡易書留となるのでしょう。

2015/08/10

マイナンバーを書かせずに、マイナンバー関連の書類をやりとりする方法

 マイナンバー法が施行される2016年1月以降、扶養控除申告書等にはマイナンバーを記入する必要があります。これらの書類にマイナンバーを記入した瞬間、この書類は「特定個人情報」となり、各種安全管理措置が必要になり、非常に扱いにくい書類になります。

 では、扶養控除申告書にマイナンバーを書かせないでやりとりする方法は考えられないのでしょうか。

 マイナンバーは本人確認措置が必要です。この本人確認措置をした後に、マイナンバーを安全管理措置が施されたシステムに入力しておきます。実際に、マイナンバーを使用するのは源泉徴収票作成するときだけですから、扶養控除申告書自体には記入しておかなくとも運用上は問題ないと考えられます。

 こうすることによって、少なくとも特定個人情報をやりとりする文書数を減らすことができるでしょう。安全管理措置が必要な文書はできる限り減らしたいものですね。

2015/08/06

来年から始まるマイナンバーについては、実は雇用保険関係をまず意識しておくことが大切

 厚生労働省から、雇用保険のマイナンバーに関するQ&Aが出ました。2016年度からのマイナンバーは、税関係ばかりが注目されていますが、実は、雇用保険関係が実務上は最も大切だったりします。特に育児休緒業給付金、高年齢継続給付金等の受給申請は、法施行以後すぐに実処理がスタートする可能性があります。税関係は、翌年の給与支払報告書までに間に合えば何とかなるのですが、雇用保険はそうはいきませんからね。アピールも若干弱いような気がします。
 
 雇用保険に関するマイナンバー制度の情報(厚生労働省)

 そんな雇用保険関係のマイナンバー業務ですが、税関係・他の社会保障関係とは(いい意味で)一線を画していることがあります。それは何か。「本人」のみの対応で済むということです。税関係は被扶養者がいますし、健康保険も扶養者がいます。そして年金では第3号被保険者がいます。そういう意味では、慌てずじっくりと対応すれば何ら問題はないですがね。

2015/08/04

就業規則は、どの範囲まで労基署に届出が必要か?

 本件は時折問題とされ、悩むところもあります。

 しかしながら、考え方としては、原則として、就業規則上の必要記載事項に関わるいわゆる「別規程」であれば、就業規則の一部とされるのでしょう。例えば、賃金規程、退職金規程、人事評価の規程、育児・介護休業規程、出張旅費規程等がこれにあたります。

 個別具体的な制度内容の詳細部分に関するルールとして作成されたものであれば、一般的には届出不要でしょうが、名称によらず内容によるので、不安であれば労働基準監督署に確認した方が良いかと思います。

2015/08/03

改正予定派遣法、労働契約申込みみなし制度と政令26業務との関係

 政令26業務は、現派遣法制の下では、「派遣期間に制限のない業務」として取り扱われています。つまり、派遣先企業にとっては、同じ派遣労働者を「いつまでも」使える制度なのです。

 しかし、改正が予定されている派遣法では、個人単位、事業所単位それぞれで「3年」の派遣期間の制限が生じます。また2015年10月1日から適用が予定されている「労働契約申込みみなし制度」との関係も気にする必要があります。

(1)個人単位の3年の制限が生じます。3年の起算日は改正法施行日になると想定されますが、法改正後は、同じ派遣労働者を「いつまでも」使える制度ではなくなります。つまり、いつかは該当者を派遣労働者として使えなくなるということなのです。したがって、もし継続して該当者に働いてもらいたいのならば、直接雇用をするしかないのでしょう。直接雇用=正社員化と考えるかも知れませんが、直接雇用の形式(正社員、非正規の契約社員等々)について、法令は言及していません。したがって、直接雇用の当初は、例えば「6ヶ月毎の契約社員で」ということも考えられるのでしょう。

(2)事業所単位でも3年の制限が生じます。しかし、3年ごとに、過半数労組がある場合は当該労組、ないときは過半数代表者に対して延長理由の説明、意見聴取をすればクリアできることになりますから、影響は軽微なのでしょう。

(3)派遣元にて無期雇用契約の派遣社員については、(1)(2)の制限は生じませんから、実務上は派遣元へ無期雇用を求めていくというのも一つの考え方です。

(4)また、2015年10月1日から施行される、「労働契約申込みみなし制度」の「違法派遣」の取扱いについても気にしておく必要があります。「違法派遣」は以下のいずれかに該当する場合です。
(a)偽装請負(または偽装出向)の場合
(b)無許可もしくは無届の派遣会社から労働者の派遣を受け入れた場合
(c)労働者派遣禁止の業務に派遣労働者を従事させた場合
(d)派遣受入可能期間を超えて労働者の派遣を受け入れた場合
 派遣法改正で直接影響を受けるのは、(d)ですが、私は法改正がトリガーとなり、「(a)偽装請負(または偽装出向)の場合」が改めて顕在化するのではないかということを気にしています。法改正の有無に関係なく、「適正な派遣」を心がける必要がありそうです。