2015/07/31

マイナンバー書籍『マイナンバー制度 法的リスク対策と特定個人情報取扱規程』

 こちらは弁護士の先生が執筆したということもあり、中級者から上級者向け。担当者が悩む規程の策定について詳しく解説されています。
 規程のサンプルは所属弁護士法人のホームページにもあり、ガイドラインの該当箇所も示されていますので分かりやすい。おすすめの一冊です。
  ホームページも随時更新されているので、合わせて参照されると良いでしょう。


2015/07/29

マイナンバー書籍『企業に求められる対応をやさしく解説マイナンバー制度の実 務と業務フローがわかる本』

 「マイナンバーとは何か?」といった、基本からしっかり解説されていますので初心者向きといえます。就業規則、委任状の取り扱いもしっかりしていて良いです。マイナンバーを初めて学ぶ方におすすめです。


【章立て】
はじめに
第1章 「マイナンバー」とは何か
第2章 マイナンバー導入のスケジュールと実務
第3章 マイナンバーの取扱いと番号取得時の本人確認
第4章 企業に求められる安全管理対策
第5章 盲点となる委託先対応
第6章 マイナンバーの保存と管理
第7章 罰則・その他

2015/07/28

労働者派遣法案の施行延期9/1→10月で労働契約申込みみなし制度と同時適用か

 労働者派遣法の施行が9月から10月になりそうです。そうすると、10月施工予定であるいわゆる「労働契約申込みみなし制度」がほぼ同時に施行されそうです。

 労働契約申込みみなし制度は、派遣先企業が「違法派遣」であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合、その違法状態が発生した時点において、派遣先企業が派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣会社における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす制度になります。

 「違法派遣」とは、以下のいずれかに該当する場合です。
(1)偽装請負(または偽装出向)の場合
(2)無許可もしくは無届の派遣会社から労働者の派遣を受け入れた場合
(3)労働者派遣禁止の業務に派遣労働者を従事させた場合
(4)派遣受入可能期間を超えて労働者の派遣を受け入れた場合

 このうち、新労働者派遣法が施行されれば(4)が個人毎3年、事業所毎3年の派遣期間に置き換わります。また、偽装請負等については今まで通りですので引き続き注意が必要でしょう。

2015/07/24

従業員のマイナンバーの「身元確認」で運転免許証を使わない運用

 マイナンバー取得の際の本人確認では、番号確認と身元確認が必要になります。このうち、身元確認については、運転免許証等が必要でありますが、正直、なかなか運用上難しいところもあります。

 ところで、従業員については、「雇用関係になるなど、人違いであることが明らかと個人番号利用事務実施者が認める場合には、身元確認は要しない。」というガイドがあります。

 まず、「雇用関係にあれば、ただちに身元確認は要しない。」という意味ではありません。あくまでも「個人番号利用事務実施者が認める場合には」ということになります。では、そのような場合とはどんな場合なのか。
国税庁が発行する『国税分野における番号法に基づく本人確認方法【事業者向け】』によれば、告示4にて以下の記載があります。

(告示4)個人番号利用事務等実施者が個人識別事項を印字した上で本人に交付又は送付した書類で当該個人番号利用事務等実施者に対して当該書類を使用して提出する場合における当該書類

 分かりにくい表現ですが、つまり、扶養控除申告書に個人識別事項(氏名及び住所又は生年月日)を印字されたものを本人確認書類として使用できるというものです。必要に応じてうまく利用することが良いでしょう。



2015/07/22

いわゆる「構内便」でマイナンバーの書類は扱えるのか

 マイナンバーの書類の送付はなかなか難しいものがあります。社内での「構内便」の問題もその一つといえるでしょう。「構内便」とは、同じ社内構内の離れた建物の間を人+乗物等を使って書類の送付を行うものです。構内便は自社社員が行う場合もありますが、場合によっては外注化(請負化)されている場合もあります。

 このような場合、「構内便」は使えるのか。構内便を使用すること自体は問題ないと思われますが、構内便の待ち書類が置いてある状態、送付方法等によって、安全管理上問題となるケースが考えられます。必要に応じて、社員が直接担当部署に持ってくる等々の仕組みが必要なのでしょうか。

2015/07/21

ストレスチェックの実施後の対応は従業員に選択肢を与えること

 2015年12月から義務化されるいわゆる「ストレスチェック」は、受診後、会社に社員の個別の結果が通知されません。これは、ストレスチェックは、メンタルヘルス不調に係る問題が深刻化していることを背景に、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(労働者自身による「気づき」)を主な目的として創設されているからです。しかしながら、社員が結果を参照し、メンタルヘルス不調の兆候が見られると感じる、あるいは、未然防止のための対策をしたい、という場合のために、会社側として、社員の選択肢をを複数用意する必要があるでしょう。

 例えば、以下のようなことが考えられます。
(1)契約している産業医との面談機会を設ける。
(2)EAP(Employee Assistance Program)制度を会社が契約している場合は、必要に応じて利用を促進させる。
(3)自分自身で心療内科等を受診する(費用は自己負担ですが)

2015/07/17

育休後、部署異動はさせられるのか

  育児・介護休業法では、育休を取得したことで、解雇や不利益な取り扱いをしてはならないとしたおり、例えば不利益な配置の変更(異動)を行うことは禁止されています。
つまり、以下のようになります。
  • 原則は、育休前の職場に復職させるのが良い。
  • しかし、諸事情によって、同職場への復職が難しい場合がある。
  • その場合であっても、本人ときちんと話をして、疑心暗鬼にならないようにし、目に見える不利益ない状況にしておくこと。
異動自体はもちろん不可ではありません。やはり、労使間のことですから、お互いに納得しているということが一番です。

2015/07/16

派遣法改正によって、いわゆる「特定派遣事業者」はどうなるのか

 現在、労働者派遣事業は、特定(届出制)、一般(許可制)の区別がありますが、これの区別は、改正によって廃止され、労働者派遣事業は、全て「許可制」となります。

 特定派遣事業が届出制なのは、一般派遣事業に比べ、雇用の安定があるからです。一方で、本当に雇用の確保をきちんと行っているのか、という疑念がある企業があるのも事実で、労働者派遣法違反で摘発されている企業も相当数あるようです。

 詳細はまだ不明ですが、現在の一般派遣事業で適用されている資産要件、新たなキャリアアップ措置の取組等の要件が組み込まれることが予想されます。その場合、これらの要件を満たすことができず、事業の継続が困難な派遣会社が出てくることが想定されます。特定派遣事業者から派遣社員を受け入れている事業者は注意が必要といえるでしょう。


2015/07/15

改正予定派遣法「3年問題」への対応


 改正が予定されている労働者派遣法についてはいわゆる「3年問題」がありますが、この内容を十分に理解する必要があります。ポイントをまとめると以下のようになるのでしょう。

(1)「個人単位」の3年の派遣期間の制限について
 3年は、組織単位毎であるが、組織単位とは、「課」単位が想定されているものと思われます。具体的には今後厚生労働省令で定められる予定です。従って、現段階においては、どのレベルで組織単位が定められるかは不明ではありますが、少なくとも、現行法の「同一の業務」(現行労働者派遣法第40条の2第3項)にて想定されている「係」よりも広まるものと推測されます。なお、「課」であることを前提とすれば、「課」を異動すれば同一人を労働者派遣として引き続き活用可能です。ただし、その後に元の課に戻すことが可能なのか(そのためのいわゆる「クーリング期間」的なものがあるのか)については、現在のところ定められていません。そのまま受け取れば、戻すことは不可なのでしょうが、実務としては確認しておかなければならない事項でしょう。


<派遣契約→請負契約→派遣契約の場合の本期間制限の解釈>
 派遣契約→請負契約→派遣契約の繰り返しについては、労働者派遣法の趣旨に照らした場合、必ずしも適切な対応とはいえない(労働局等の「助言」を受ける可能性あり)という前提があります。この点は、いわゆる2009年問題の際にも話題にはなりました。
 しかしながら、実務的にこのような対応になった場合、(後の)派遣契約の本期間制限がどうなるのか、という疑問が生じます。上記のように、労働者派遣法の趣旨からして適切でないという前提があるため、厚生労働省令等で直接的に定められない可能性がありますが、「クーリング期間」的なものが定められるかどうかも含め、今後確認をしておく必要はあるでしょう。



(2)「事業所単位」の3年の派遣期間の制限について
 事業所単位の期間制限の起算日については、当該事業所において「労働者派遣の役務の提供」が開始された時点(改正法施行時点において、労働者派遣の役務提供がされているとすれば、その日より3年と解釈)となると思われます。実務的には、派遣会社に觝触日通知をすることになるでしょう。
 しかしながら、本期間制限については、3年ごとに、過半数労組がある場合は当該労組、ないときは過半数代表者に対して延長理由の説明、意見聴取をすればクリアできることになりますから、影響は軽微であると思われます。もちろん説明・手続きをきちんとしなければならないということはいうまでもありません。


(3)(1)(2)とも、派遣元にて無期雇用契約の派遣社員については適用になりません。したがって、派遣先としては、派遣元に対して無期雇用を求める、または、派遣先が直接雇用をする等、雇用の安定のための措置を施すことは当然ながら重要なのでしょう


(4)2015年10月1日から施行される、「労働契約申込みみなし制度」の適用にも注意が必要です。上記「3年問題」に違反した場合は、同制度の適用になります。



2015/07/13

従業員のマイナンバーの確認のタイミングについて

 従業員からのマイナンバーの収集はいつ行えばよいのでしょうか。

 マイナンバー制度は、2016年1月からスタートしますが、本年10月以降は、通知カードによって個人番号が通知された後であれば、個人番号の事前収集が可能となっています(当初は事前収集は不可でしたが、OKとなりました。)。しかし、マイナンバーの事前収集が可能なのは、事業者が、いわゆる「安全管理措置」をきちんと施した上で、「本人確認措置」をとることが必要になります。安全管理措置が施されていないのに2015年中に事前収集をすると、安全管理措置義務違反になる可能性があります。

 一方、2016年の扶養控除申告書には、従業員や扶養家族のマイナンバーを記載する欄がありますが、法スタート前の2015年中の収集であれば、マイナンバーの記載は不要なのでしょう。また、マイナンバーの役所に対する提出は、2016年の源泉徴収票がスタートです。2016年の源泉徴収票は、一般的には2017年1月までに提出すれば良いのです。一方、退職する従業員については、退職した場合にはその際にマイナンバーを収集する必要があります。また、新入社員、中途採用の社員、パート等で新規に雇用された者についても、入社時点でマイナンバーを収集すべきでしょう。

 以上、まとめると、入社や退職をする従業員からまずマイナンバーを収集し、その他の従業員については、2016年内を目処に、順次マイナンバーを収集していくという対応も考えられます。なお、雇用保険もについては2016年よりマイナンバーの利用が始まります。しかしながら、雇用保険の手続きで、マイナンバーを取り扱わなければならないケースは少ないでしょうから、ケースが出てきたら都度対応で良いのでしょう。

 社会保障分野については、税関係と異なり、関連の省令等がまだ出ていません。個人番号の本人確認のための告示も出ていません。国税庁の本人確認方法が、社会保障分野においても同じ方法であるとは限りません(ほぼ方法であると推測しますが)。

2015/07/10

定年退職→定年継続再雇用後に労働条件を下げる

 社員のパフォーマンスが悪くとも、労働条件を大きく下げるというのはなかなか難しいものです。

 しかしながら、例えば管理職なのにそれ相応の働きをしていない、管理職でなくとも給与に見合った働きをしていないというケースはないでしょうか。周囲からも「何でコイツがこんなに給料もらっているんだ。」という噂なんかが立っていたりします。逆に、本人から「私は管理職なのにそのレベルの仕事ができていない。一般社員に格下げしてもらえないだろうか。」という話が上がったりします。

 そんなときは、定年退職から定年継続再雇用に切り替わる段階で、一定程度低い労働条件を設定できる仕組みを設けておくことも必要でしょう。

 定年退職後、定年継続再雇用になる段階で、一旦雇用契約は終了し、会社と本人との合意で、新たに定年継続再雇用契約が締結されます。会社が出された条件に対して締結するかしないかは、本人が同意するかしないかの問題です。それは、労働条件の問題は、所詮当該労使間の自由だからです。

2015/07/01

東洋ゴム工業免震ゴム偽装問題はコンプライアンス問題についての他山の石

 東洋ゴム工業の免震ゴム偽装問題が何かと話題になっていますが、私たちにも教訓となる内容と言えるでしょう。

・担当1人で長い間行っていたということ(体制の問題)。1人で丸抱えさせるということは良くないですね。
・東洋ゴム工業にとって、当事業の売上は全体の中でも少ないこと(売上の大小にかかわらず、レピュテーショナルリスクにつながってしまう危険性があること。)。

 誰も初めからデータの改ざんを行おうなどと思っていないはずです。データ改ざんは行わない、見逃さない、見過ごさないというごく当たり前のことが、PDCAサイクルにてできているかどうかが大切なのです。